使っていない空き家の一部を活かす:小さなレンタルスペースで地域とつながる暮らし方
はじめに:空き家の「一部」を活かすという考え方
ご自宅とは別に、使っていない空き家をお持ちの方や、家の中の一部が空いているという方もいらっしゃるかもしれません。時間を持て余しがちなリタイア後に、「何か地域とつながる活動を始めたいけれど、大がかりなことは難しい」と感じている方も多いのではないでしょうか。
空き家というと、「まるごと活用しないといけない」「大規模な改修が必要なのでは」と考えてしまいがちですが、必ずしもそうではありません。実は、空き家の「一部」だけを活かすことでも、地域との新しいつながりを生み出し、ご自身の暮らしにも張りをもたらすことができるのです。
この記事では、空き家の一部を使って、地域の人たちが気軽に集まれるような「小さなレンタルスペース」を始める方法と、そこから生まれる地域との関わりについて、分かりやすくご紹介します。
小さなレンタルスペースを始めるメリットとは
空き家全体ではなく、一部を活用して小さなレンタルスペースを始めることには、いくつかのメリットがあります。
-
始めるハードルが低い 家全体の大規模な改修や整備は不要な場合が多いです。一部屋だけ、あるいは玄関周りのスペースなど、無理のない範囲で始めることができます。
-
費用を抑えられる可能性がある 改修範囲が狭いため、初期費用を抑えられます。また、使っていない空間を有効活用することで、維持管理の負担を少しでも軽減できるかもしれません。
-
特別なスキルは不要 何かを教えたり、専門的なサービスを提供したりする必要はありません。場所を貸すことが主な役割ですので、比較的始めやすい活動と言えます。
-
地域の人との自然な交流が生まれる スペースを利用する地域の人との会話を通じて、自然な形で交流が生まれます。近所の方との顔見知りになるきっかけにもなります。
-
柔軟な運営が可能 貸し出す曜日や時間を自由に設定できます。ご自身の体調や都合に合わせて、無理なく続けることができます。
どんな場所がレンタルスペースに向いているか
ご自宅や空き家の中で、どんな場所がレンタルスペースに適しているでしょうか。
- 独立した部屋 家の中にあっても、玄関近くにあったり、他の生活空間から区切られていたりする部屋は、プライバシーが保たれやすく使いやすいです。
- 広すぎない空間 数人から10人程度が集まるのに適した、広すぎない空間が管理しやすく人気です。
- 清潔感と安全性 利用する方が安心して過ごせるよう、きれいに掃除されていること、段差や危険な箇所がないことが重要です。
- トイレや水回りへのアクセス 利用者が使えるトイレが近くにあるか、簡単な手洗いや給水ができる場所があると便利です。
日当たりが良かったり、庭の緑が見えたりするなど、居心地の良い空間だとさらに喜ばれます。
始める前の準備:目的を明確に、無理なく計画を
小さなレンタルスペースを始めるにあたって、まず考えておきたいことをいくつかご紹介します。
-
何のために、誰に利用してほしいか? 「近所のお母さんたちが集まっておしゃべりする場にしたい」「趣味のサークル活動に使ってもらいたい」「地域の会合に利用してもらいたい」など、どんな人に、どんな目的で使ってほしいかを考えると、必要な改修や備品、ルールが見えてきます。完璧を目指さず、まずは思いつく範囲で大丈夫です。
-
必要な改修や整備は? 大がかりなリフォームは必要ありません。壁紙の貼り替えやペンキ塗り直し、床の補修など、DIYでできる範囲の簡単な修繕や、徹底的な掃除、家具の配置替えで十分な場合が多いです。安全のために段差をなくしたり、手すりをつけたりすることも検討しましょう。
-
最低限必要な備品は? テーブルと椅子、照明、コンセント、できれば簡単な飲み物を用意できるポットやコップなどがあると便利です。用途によっては、ホワイトボードやプロジェクターなどが必要になる場合もありますが、最初は最低限のもので始め、必要に応じて揃えていくのも良い方法です。
-
利用ルールと料金設定 利用できる曜日や時間帯、利用料金、予約方法、飲食の可否、ゴミは持ち帰りかなど、簡単なルールを決めておきましょう。料金は、最初は無料や低額から始めてみるのも良いかもしれません。地域の人に使ってもらいやすい料金設定を心がけましょう。
-
ご近所への配慮 レンタルスペースとして人の出入りがあることを、事前に近所の方に伝えておくと安心です。騒音への配慮や、利用者が駐車場で困らないように、駐車スペースの有無なども確認しておきましょう。
小さなレンタルスペースの運営について
運営というと難しく感じるかもしれませんが、個人で始める小さなレンタルスペースなら、ご自身のペースで無理なく行えます。
-
告知方法 まずは、近所の方や知人に直接話して伝えるのが一番です。「使っていない部屋を開放して、地域の人が集まれるようにしようと思っているんです」と気軽に話してみましょう。地域の掲示板に貼り紙をする、自治体の広報誌に掲載してもらう、公民館や地域の集まりで紹介してもらうといった方法もあります。もしご家族に協力を頼めるなら、SNSやブログで簡単に告知してもらうことも可能です。
-
予約管理 最初はノートやカレンダーで十分です。利用したいという方がいたら、名前と希望日時、人数、連絡先を控えておきましょう。予約方法をシンプルにしておくことが、利用する方のハードルを下げます。
-
利用時の対応 利用者が来たら、笑顔で迎え、簡単な利用方法やルールを説明します。利用中は基本的には自由に使っていただきますが、何か困ったことがないか、時々様子を伺うと丁寧です。
-
利用後の清掃 利用者が気持ちよく使えるよう、利用が終わるごとに掃除をしましょう。これも運営の重要な一部です。
資金について:補助金などの可能性
小さなレンタルスペースであれば、大規模な改修が不要なため、多額の資金はかからない場合が多いです。簡単な改修費や備品購入費が主な費用となるでしょう。
もし、ある程度の改修を検討したい場合は、お住まいの自治体が空き家改修に関する補助金制度を設けている可能性があります。「空き家バンク」を運営している自治体であれば、そういった情報も得やすいでしょう。ただし、補助金には条件や期間がありますので、詳しくは必ず自治体の窓口に直接確認することが重要です。
地域とのつながりを育むために
レンタルスペースを運営することは、それ自体が地域との新しいつながりを生み出す活動です。
利用する方との会話はもちろん、スペースを準備したり運営したりする中で、ご近所の方に手伝ってもらったり、アドバイスをもらったりすることもあるかもしれません。そうした一つ一つの関わりが、地域での居場所となり、新しい生きがいにつながっていきます。
利用者の声に耳を傾け、「こんなものがあるといいな」「こんなことに使えたらいいな」といった意見を取り入れながら、スペースを少しずつ改善していくことも、利用者や地域の方との関係を深める良いきっかけになります。
困った時の相談先
新しいことを始める時には、不安や疑問がつきものです。一人で抱え込まず、誰かに相談してみましょう。
- お住まいの自治体の窓口 空き家に関する相談窓口や、地域づくり、生涯学習などの担当部署に相談してみましょう。地域の情報や、利用できる制度について教えてもらえることがあります。
- 地域のNPOや団体 地域づくりやまちづくりに取り組むNPOや住民団体が、活動のヒントをくれたり、相談に乗ってくれたりすることがあります。
- 地域の社会福祉協議会 地域の高齢者向けの活動や、地域住民の交流に関する情報を持っている場合があります。
まずは、お近くの自治体窓口に「空き家の一部を活用して、地域の方が気軽に集まれる場所を作りたいのですが、どこに相談したら良いですか?」と尋ねてみるのが、最初の一歩としておすすめです。
まとめ:小さな一歩が、新しい暮らしにつながる
空き家の一部を使った小さなレンタルスペースは、大きなリスクなく始められ、地域の人との温かい交流を生み出す素晴らしい方法です。完璧な状態を目指すのではなく、まずは「ここを、地域の人に少しだけ貸してみようかな」という小さな一歩から始めてみてはいかがでしょうか。
この活動を通じて、地域の皆さんと顔見知りになり、感謝されたり、必要とされたりすることで、日々の暮らしに新しい彩りが生まれることでしょう。難しく考えすぎず、ご自身のペースで、できることから挑戦してみてください。応援しています。