空き家で地域の「もったいない」を活かす:リメイク・修理と交換会で人とつながるヒント
地方で暮らしていると、まだ使えるのに捨てられてしまうものや、少し直せばまた使えるものが増えていると感じることはありませんか。これは「もったいない」と感じるだけでなく、ごみ処理の問題など、地域にとっても困りごとになることがあります。
一方で、私たちは人生の経験を通して、物を大切に使う知恵や、壊れたものを直したり、古くなったものを新しく生まれ変わらせたりする技術を身につけてきました。もし、こうした知恵や技術を活かして、地域の「もったいない」を減らし、同時に地域の人とつながることができたら、それは素晴らしい生きがいになるかもしれません。
この記事では、使っていない空き家の一部を活用して、地域の不要品を活かす「リメイク・修理工房と交換会」を始めるアイデアと、そのヒントをご紹介します。
空き家を使った「リメイク・修理工房と交換会」とは?
この活動は、空き家の一部を作業スペースや交流スペースとして活用し、以下のようなことを地域の人々と一緒に行うものです。
- リメイク・修理工房:
- 地域で不要になった家具、洋服、雑貨などを持ち寄り、直したり、別の用途に作り変えたりします。
- 簡単な椅子の修理、洋服のほつれ直しやサイズ調整、古くなった布を使った小物作りなど、特別な道具がなくてもできることから始められます。
- 自分の得意な技術(裁縫、木工、編み物など)を活かして、他の人に教えたり、一緒に作業したりすることもできます。
- 交換会:
- まだ使えるけれど自分には必要なくなったものを持ち寄り、必要な人同士で交換する場です。
- 洋服、本、日用品、家庭菜園で採れた野菜など、様々なものが対象になります。
- ただ物を交換するだけでなく、持ち寄ったものの思い出や使い方などを話しながら、自然と会話が生まれる楽しい場になります。
これは、大規模な事業ではなく、あくまで地域内の助け合いや交流を目的とした、無理なく続けられる小さな活動です。
空き家をどう活用できますか?
空き家全体を使う必要はありません。例えば、次のような場所の一部を活用することを考えてみましょう。
- 使っていない離れや物置
- 広い居間や和室
- 日当たりの良い縁側(えんがわ)や庭先
必要なスペースは、作業をする場所、材料や道具を置いておく場所、交換品を並べる場所、そして参加者が休憩したりお話ししたりする交流スペースです。大掛かり(おおがかり)な改修はせずとも、まずは掃除をして安全に使えるように整えることから始められます。DIY(自分でできる簡単な修理や改修)で棚を作ったり、作業台を用意したりすることも良いでしょう。地域の人に手伝ってもらうのも、交流のきっかけになります。
どんな活動内容が考えられますか?
活動内容は、参加者の興味や得意なこと、地域のニーズに合わせて様々です。
- 洋服のリメイク・繕(つくろ)い教室: 着なくなった洋服からバッグや小物を作る、ボタン付けやほつれ直しを教え合う。
- 家具の簡単修理: きしみのある椅子やぐらつくテーブルの修理方法を教えたり、一緒に直したりする。
- 古道具・雑貨のリメイク: 使われなくなった空き家や地域で見つかった古道具を磨いたり、色を塗ったりして再利用する。
- 季節の手仕事品作り: 古い着物や端切れ(はぎれ)を使ったつるし飾り、わらを使った民芸品(みんげいひん)作りなど、地域の伝統的な手仕事を取り入れる。
- 〇〇交換会: 本の交換会(ブックエクスチェンジ)、子供服のおさがり交換会、家庭菜園の余り物交換会など、テーマを決めて定期的に開催する。
まずは「簡単な繕いもの相談会」や「不要になった本を持ち寄るお茶会」など、小さなイベントから始めて、少しずつ活動を広げていくのがおすすめです。
始めるためのステップ
- 空き家の一部を整える: まずは活動に使いたい場所を掃除し、安全に使えるように片付けます。照明や換気(かんき)なども確認しましょう。
- 必要なものを準備する: 作業台や椅子、使う道具(裁縫道具、簡単な工具など)を揃えます。高価なものを買う必要はありません。家庭にあるものを使ったり、参加者に持ち寄ってもらったり、地域の人に借りたりすることもできます。
- どんな活動をしたいか考える: どんな人たちに来てほしいか、どんなものを扱いたいか、どんなことをしてみたいか、具体的に考えてみましょう。
- 地域の人に声をかける: 近所の方や地域の活動に関心のある方に、「空き家でこんなことを始めてみたいのですが…」と相談してみましょう。口コミや回覧板(かいらんばん)、地域の掲示板などで知らせるのも良い方法です。協力してくれる人がいると、活動がスムーズに進みます。
- 小さく始めてみる: 最初から完璧を目指す必要はありません。週に一度の数時間だけ開けてみる、月に一度イベントとして開催するなど、無理のない範囲で始めてみて、様子を見ながら活動を広げていきましょう。
この活動のメリットとやりがい
この活動を始めることで、様々な良いことがあります。
- 地域貢献になる: 地域の「もったいない」を減らし、ごみ削減(さくげん)に貢献できます。物を大切にする文化を次世代に伝えることにもつながります。
- 自分のスキルを活かせる: これまで培ってきた手仕事の技術や物を修理する知恵を活かすことができます。誰かの役に立つことで、大きなやりがいを感じられます。
- 地域の人とつながる: 活動を通して様々な年代の人と出会い、交流が生まれます。「ありがとう」と感謝されたり、一緒に笑い合ったりする中で、新しい友達ができ、孤独(こどく)を感じることが減るでしょう。
- 生きがいが見つかる: 自分のペースで無理なく続けられる活動が、日々の暮らしにハリを与え、新しい生きがいや楽しみになります。
知っておきたい注意点
安心して活動を続けるために、いくつか注意しておきたい点があります。
- 安全管理: 作業中の怪我(けが)を防ぐため、道具の扱い方には注意し、スペースを整理整頓して安全な環境を保ちましょう。
- 扱う品物について: 飲食物の交換会は食中毒などの問題が起こる可能性があります。まずは生活雑貨や衣類、本などから始めるのが無難(ぶなん)です。危険な物や衛生的に問題のある物は扱わないようにしましょう。
- 金銭の授受(じゅじゅ): 基本的には地域の助け合い、交流を目的とするため、金銭のやり取りは最小限にするか、材料費程度にとどめるのが良いでしょう。大規模な商売と見なされると、必要な許可(きょか)などが変わってきます。判断に迷う場合は、後述する相談先に確認することをおすすめします。
- 近所への配慮: 参加者が集まることで、騒音(そうおん)や駐車場(ちゅうしゃじょう)の問題が起こる可能性もゼロではありません。事前に近所の方に活動内容を伝え、理解と協力を得ておくことが大切です。
困ったときは、どこに相談すれば良い?
一人で悩まず、地域の色々な場所に相談してみましょう。
- お住まいの自治体の空き家相談窓口: 空き家活用に関する一般的な相談に乗ってくれます。
- 地域の社会福祉協議会(しゃかいふくしきょうぎかい)やNPO法人: 地域での活動や住民交流を支援(しえん)している場合があります。
- 公民館(こうみんかん)や地域の集会所: 地域住民の集まる場所であり、情報交換や相談がしやすい場所です。
- 近所の顔見知りや自治会長(じちかいちょう)さん: 地域での活動の経験があるかもしれません。まずは身近な人に相談してみるのも良いでしょう。
地域の状況によって相談先は様々ですが、「こんなことをしてみたいのだけど、どうすれば良いかしら?」と気軽に話してみることが、次の一歩につながります。
まとめ
空き家は、ただ使われていない建物ではなく、地域の課題を解決したり、人々のつながりを生み出したりする可能性を秘(ひ)めた場所です。特に、使われなくなったものを活かす「リメイク・修理工房と交換会」は、皆様の豊かな経験や知恵を活かし、地域とつながりながら無理なく始められる素晴らしいアイデアの一つです。
大きなことから始める必要はありません。まずは、空き家の一部を片付けてみたり、近所の人に「こんなことができたら面白いと思わない?」と話してみたりする、小さな一歩から踏み出してみましょう。きっと、そこから新しい出会いや発見があり、皆様のセカンドライフをより豊かにしてくれるはずです。
このアイデアが、皆様の地方での新しい暮らしと生きがいを見つけるヒントになれば幸いです。