空き家を地域の朝市拠点に:手作り品や農産物を持ち寄る集いの場
地方の空き家で、地域とつながる「朝市(あさいち)・マルシェ」の拠点をつくるアイデア
リタイア後の時間をどのように過ごそうか、地方で新しい暮らしを始めたいけれど何から手をつければ良いか、そうお考えの方もいらっしゃるかもしれません。これまでの経験や趣味を活かして、地域の人々と交流しながら、暮らしに彩りを与える活動をしたい、そんな願いを叶える方法の一つに、「空き家を地域の朝市(あさいち)やマルシェの拠点として活用する」というアイデアがあります。
朝市やマルシェと聞くと、賑やかな大きなイベントを想像されるかもしれませんが、ここでご紹介するのは、もっと身近で、地域に根ざした「小さな集いの場」としての活用方法です。空き家の一角や庭先を使って、地域の人が作った野菜や手作り品を持ち寄り、ゆるやかに交流する、そんなイメージです。
この記事では、空き家を朝市やマルシェの拠点にする具体的なアイデアや、どのように始めれば良いか、どんな点に注意すれば良いかについて、分かりやすくご説明します。
空き家を「朝市・マルシェ拠点」にするとは?
空き家を朝市やマルシェの拠点にするというのは、文字通り、使われていない建物やその敷地を、定期的に地域の人々が集まり、手作りの品や採れたての農産物などを持ち寄って販売したり、おしゃべりしたりする場所として活用することです。
- どんなものが集まる?:自家製の野菜や果物、手作りのパンやお菓子、お惣菜、工芸品、リサイクル品、地域の特産品など、地域で生まれた様々なものが並びます。
- どんな人たちが関わる?:地域の農家さん、料理や手芸が得意な方、趣味で物作りをしている方、そしてもちろん、買いに来る地域住民の方々です。空き家を拠点として提供するあなた自身も、何かを販売しても良いですし、場の運営に徹するのも良いでしょう。
- どんな場所になる?:単に物を売買するだけでなく、地域の人々が気軽に立ち寄り、顔を合わせ、情報交換をする、温かい交流の場となります。
大規模なビジネスというよりは、地域に活気をもたらし、人々の繋がりを深めるための「暮らしに根差した活動」と捉えると良いでしょう。
なぜ空き家が朝市・マルシェ拠点に向いているのか?
空き家を朝市やマルシェの拠点として活用することには、いくつかの利点があります。
- スペースの活用: 広さのある空き家であれば、商品を並べるスペースや、買いに来た人が休憩できるスペースを設けることができます。屋内のスペースがあれば、天候に左右されずに開催できます。
- 立地の可能性: 地方には、昔ながらの商店街にあった建物や、集落の中心部に近い空き家が多くあります。こうした場所は、地域住民にとって馴染みがあり、集まりやすい可能性があります。
- 初期費用を抑えられる: 新しく建物を借りたり建てたりするよりも、既存の空き家を活用する方が、初期費用を抑えられる場合があります。大規模な改修が不要なケースも多いです。
- 地域の景観保全・活性化: 使われていない空き家が活用されることで、地域の景観が守られ、人が集まることで周辺地域に活気が生まれます。
始めるためのステップ
「自分にもできるかしら?」と感じた方のために、具体的なステップを考えてみましょう。
ステップ1:どんな朝市・マルシェにしたいかイメージする
- どんなものを持ち寄る場所にしたいですか?(野菜中心?手作り品も?古本は?)
- どれくらいの頻度で開催したいですか?(毎週?毎月?季節ごと?)
- どんな雰囲気にしたいですか?(賑やか?ゆったり?)
まずは、ご自身の興味や関心、そして地域のニーズを考えながら、漠然としたイメージを膨らませてみましょう。
ステップ2:活用できそうな空き家を探す
- ご自身の所有する空き家があれば、それが第一候補です。
- もし空き家をお持ちでない場合は、お住まいの自治体の「空き家バンク」に登録されている物件を調べてみましょう。空き家バンクの担当者に相談するのも良い方法です。
- 地域の不動産屋さんや、近所の方に「使っていない建物はないか」尋ねてみるのも思わぬ情報が得られることがあります。
物件を探す際は、アクセス、広さ、建物の状態(特に屋根や水回り)、近隣との関係などを考慮すると良いでしょう。
ステップ3:空き家の状態を確認し、必要なら簡単な整備をする
大きな改修工事が必要な物件は、費用や手間がかかりハードルが高くなります。まずは、掃除や草刈り、簡単な片付けなど、比較的少ない手間で活用できる空き家を探すのがおすすめです。
- 屋根や壁に雨漏りはないか?
- 水は出るか? トイレは使えるか?
- 電気は通っているか? 照明はつくか?
- 庭や周辺の草木は手入れが必要か?
専門家に見てもらう必要があるかどうかも含め、現状をしっかり把握します。所有者(ご自身でない場合)と、どこまで手を加えて良いか、費用負担はどうするかなどをよく話し合うことが大切です。
ステップ4:協力してくれる人を探す(一人でも大丈夫)
一人で始めることもできますが、地域の知人や友人に声をかけて、一緒に企画・運営する仲間を見つけるのも良いでしょう。複数人で始めることで、アイデアが広がったり、準備や当日の負担を分担したりできます。地域のボランティア団体やNPOが協力してくれる可能性もあります。
ステップ5:開催の計画を立てる
- 開催場所: 空き家の屋内、庭、玄関先など、どこを使うかを決めます。
- 開催日時: 例えば「毎月第2土曜日の午前9時から正午まで」のように、分かりやすく継続しやすい日時を決めます。
- 出店者集め: 声をかけた協力者や、地域の農家さん、手作り品を作っている方に参加を呼びかけます。最初は数人でも十分です。
- ルール決め: 出店料の有無、販売できるもの、衛生面の注意、ごみの処理方法など、簡単なルールを決めます。
- 告知方法: 地域内の回覧板や掲示板への貼り紙、地域の公民館や集会所での告知、口コミなどが有効です。デジタルが苦手な方でも、これらのアナログな方法で十分に地域に情報を届けられます。
ステップ6:いよいよ開催!
計画通りに準備を進め、無理のない範囲で始めてみましょう。最初はうまくいかない点もあるかもしれませんが、回を重ねるごとに改善していけば大丈夫です。何よりも、集まる人たちが楽しめる雰囲気を大切にしましょう。
成功のためのヒントと注意点
- 地域の人との良い関係づくり: 朝市・マルシェは地域あっての活動です。近所の方への声かけや、協力者への感謝の気持ちを忘れずに、良い関係を築くことが何よりも大切です。
- 無理なく、楽しく続ける: 最初から完璧を目指す必要はありません。できる範囲で、細く長く続けることを目標にしましょう。何よりも、ご自身が活動を楽しむことが、継続の秘訣です。
- 交流を大切にする: 物を売るだけでなく、立ち寄った方との会話や、出店者同士の交流を大切にしましょう。ここから新しい繋がりが生まれることもあります。
- 必要な手続きを確認する: 飲食物を販売する場合など、衛生面の許可が必要な場合があります。事前に保健所や自治体の担当窓口に確認しておくと安心です。小規模な農産物の販売など、特定の条件を満たせば許可が不要な場合もあります。
- 近隣への配慮: 開催する時間帯、騒音、来場者の駐車スペースなど、近隣の方にご迷惑がかからないよう、事前に配慮や相談をしておくことが重要です。
- 収益目標は控えめに: 生計を立てるための大規模な事業ではなく、地域貢献や生きがい、交流を主な目的とする場合、収益を第一に考えすぎると負担が大きくなることがあります。活動を続けるための費用が賄える程度に考えると良いでしょう。
困った時は、地域の窓口に相談してみましょう
空き家の活用や、地域での活動について、分からないことや不安なことが出てくるかもしれません。そんな時は、一人で抱え込まずに相談できる場所があります。
- お住まいの市町村役場: 空き家に関する窓口や、地域振興、商工、観光などの担当部署に相談してみましょう。空き家バンクの情報や、地域の活動に関する情報、利用できる補助金などについて教えてもらえることがあります。
- 地域の社会福祉協議会(しゃかいふくしきょうぎかい): 高齢者の地域での活動や、地域の助け合いなどについて相談できる場合があります。
- 地域のNPOや市民活動団体: すでに地域で活動している団体があれば、経験や知恵を借りられるかもしれません。
- 商工会(しょうこうかい): 小規模な事業的な側面が強くなる場合、相談できることがあります。
まずは、お近くの市町村役場の窓口に電話や直接訪問で相談してみるのが、最初の一歩としておすすめです。「空き家を活用して地域の人たちが集まる小さな朝市のようなものを開いてみたいのですが、どこに相談すれば良いですか?」と尋ねてみましょう。
まとめ
空き家を地域の朝市やマルシェの拠点として活用することは、リタイア後の新しい暮らしに、地域との繋がり、生きがい、そして少しの収入をもたらす、素晴らしいアイデアの一つです。最初から完璧を目指す必要はありません。まずは小さく始めてみて、少しずつ形にしていくことができます。
不安もあるかもしれませんが、地域の相談窓口や、協力してくれるかもしれない地域の人々に相談しながら、ゆっくりと進めてみてください。空き家が、あなたの、そして地域の新しい「集いの場」となることを願っています。