空き家で始める活動:地域に受け入れてもらい、仲間を見つける方法
地方で空き家を使った新しい活動を始めてみたい、と考えていらっしゃる方は多いと思います。一方で、「地域の人たちにうまく受け入れてもらえるだろうか」「活動を手伝ってくれる人や、一緒に考えてくれる仲間はできるだろうか」といった不安を感じることもあるかもしれません。
たしかに、地方での空き家活用は、その場所だけでなく、地域とのつながりがとても大切になります。地域に根差した活動は、一人で全てをこなすよりも、周りの方の理解や協力を得ることで、より豊かで無理なく続けられるものになるはずです。
この記事では、あなたが空き家を使った活動を地域に受け入れてもらい、一緒に楽しんだり支え合ったりできる仲間を見つけるための心構えや、具体的なステップについて、分かりやすくご説明します。
なぜ地域とのつながりが大切なのでしょうか?
地方で空き家を借りたり購入したりして活動を始めることは、地域にとっては新しい住民や新しい風を受け入れることでもあります。古くから住んでいる方々にとっては、見慣れない人が来て、慣れないことを始めるように見えるかもしれません。
地域の方々と良好な関係を築くことは、以下のような点であなたの活動を助けてくれます。
- 情報収集がしやすくなる: 地域の情報(生活情報、歴史、文化、行事など)は、人づきあいの中で自然と得られることが多いです。
- 困りごとを相談しやすくなる: ちょっとした建物の不具合、地域ならではの習慣など、困ったときに気軽に相談できる人がいると安心です。
- 活動への理解や協力が得られる: 活動の内容を理解してもらうことで、応援してもらえたり、手伝ってもらえたりする可能性があります。
- 地域の一員としての居場所ができる: 活動を通じて地域の人々と交流することで、あなたは地域にとってかけがえのない一員となっていきます。
空き家を活かすことは「場所」を使うことですが、その活動を支えるのは「人」とのつながりなのです。
地域に受け入れてもらうための心構え
まずは、地域に馴染み、信頼を得るための基本的な心構えから始めましょう。
1. まずは「住人」として地域を知ることから
活動を始める前に、まずはその地域の「住人」として、日々の暮らしの中で地域の方と関わってみましょう。
- 自分から丁寧に挨拶をする: 道で会ったとき、近所のお店に行ったときなど、明るく挨拶をすることを心がけましょう。「おはようございます」「こんにちは」といった基本的なことですが、相手に良い印象を与え、会話のきっかけにもなります。
- 地域の行事に参加してみる: お祭り、清掃活動、運動会、防災訓練など、参加できる地域の行事があれば、積極的に顔を出してみましょう。強制ではありませんが、顔と名前を覚えてもらい、地域の一員として認識してもらう良い機会になります。
- 地元の商店を利用してみる: 地元のスーパーや商店で買い物をすることで、お店の人や他の地域の人との交流が生まれることがあります。
まずは「空き家を活用する人」としてではなく、「新しくこの地域に住むことになった人」として、地域に溶け込もうとする姿勢が大切です。
2. 活動の目的や内容を丁寧に説明する
空き家でどんな活動をしたいのか、その目的や内容を、地域のキーパーソンやご近所さんに話してみましょう。
- 自治会や町内会の役員の方に相談する: 地域のことを一番よく知っている方々です。事前に相談し、理解を得ておくことがスムーズな活動につながります。
- ご近所さんに話してみる: 一番身近な存在であるご近所さんには、活動によって迷惑をかけてしまう可能性がないかなども含めて、丁寧に説明しましょう。「〇〇という活動を始めることになりました。少し賑やかになることがあるかもしれませんが、気をつけるようにしますので、何かありましたらいつでもお声がけください。」といったように、配慮の言葉を添えると良いでしょう。
- 分かりやすい言葉で伝える: 専門用語を使わず、どんな人にとって、地域にとって、どのように役立つかもしれないのかを、具体的にイメージしやすい言葉で話しましょう。「小さな子どもたちが安心して遊べる場所にしたいんです」「昔ながらの手仕事を教え合う場にしたいんです」など、活動を通じて地域にどう貢献したいかを伝えると共感を得やすくなります。
一方的に「やります」と伝えるのではなく、「ご相談」という形で入ることで、地域の方も話を聞きやすく、意見を伝えやすくなります。
3. 地域のルールや習慣を尊重する
長年培われてきた地域のルールや習慣には、その地域で快適に暮らすための知恵が詰まっています。
- ゴミ出しのルール、お祭りへの参加、冠婚葬祭の慣習など、地域特有のルールや習慣があれば、まずはそれに従う姿勢を持ちましょう。
- 分からないことは、遠慮せずに地域の方に尋ねてみましょう。尋ねることで、コミュニケーションが生まれ、地域を知ろうとするあなたの誠実な姿勢が伝わります。
新しい風を吹き込むことは素晴らしいですが、その前に地域が大切にしてきたものを理解し、尊重する気持ちが大切です。
4. 謙虚な姿勢で、地域に貢献できることを考える
「地域を変えてやろう」というような意気込みよりも、「この地域で何かお役に立てることはないだろうか」「地域の一員として、できることから力になりたい」という謙虚な姿勢の方が、地域には受け入れられやすいものです。
あなたの持つ知識や経験が、思わぬ形で地域の役に立つこともあります。例えば、あなたが畑仕事が得意なら、地域の人にアドバイスをしたり、一緒に作業をしたりすることができるかもしれません。パソコンに詳しければ、地域のお年寄りに使い方を教える機会を作れるかもしれません。
活動の計画を立てる際も、「私がやりたいこと」だけでなく、「地域の人が必要としていること」「地域がもっと良くなること」という視点を持つことが、共感や協力につながる第一歩です。
協力者を見つけるための具体的なステップ
さて、地域との関係づくりの心構えを持ったら、具体的にどのように協力者や活動仲間を見つけていけば良いでしょうか。
ステップ1:地域の情報収集から始める
協力者を見つける第一歩は、まずその地域にどんな人がいて、どんな活動が行われているのかを知ることです。
- 地域の情報源を活用する: 自治体の広報誌、回覧板、地域の掲示板、地元の小さな商店、公民館、図書館などには、地域のイベント情報やサークルの案内などが載っていることがあります。
- インターネットやSNSを調べる(もし可能であれば): もし地域の情報がインターネットやSNSで発信されていれば、参考にしてみるのも良いでしょう。ただし、全ての地域にあるわけではありませんし、情報が古い場合もあります。
ステップ2:小さな交流の場に顔を出してみる
いきなり自分の活動を始めるのではなく、すでに地域で行われている小さな集まりや活動に参加してみましょう。
- 地域のサロンや集会所: 高齢者サロンや、地域住民が集まる集会所があれば、気軽に参加してみましょう。お茶を飲みながらおしゃべりする中で、地域の様子を知ったり、色々な人と知り合ったりできます。
- 趣味のサークルやボランティア活動: 自分の趣味(手芸、畑仕事、散歩など)に関するサークルや、地域の清掃活動などのボランティアがあれば参加してみましょう。同じ関心を持つ人と自然と仲良くなれます。
- 公民館などが開催する講座やイベント: 料理教室、健康講座、歴史講座など、関心のあるものに参加してみましょう。
まずは「お客様」ではなく、「参加者」として地域に入り込むことで、あなたのことに関心を持ってくれたり、話しかけてくれたりする人が現れるかもしれません。
ステップ3:地域の相談窓口を利用する
空き家活用や移住に関する公的な窓口は、情報提供だけでなく、地域とのつながりをサポートしてくれる場合があります。
- 自治体の空き家バンク窓口: 空き家に関する情報だけでなく、地域の特性や、活用に関する相談に乗ってくれます。地域のキーパーソンや活動団体を紹介してくれる可能性もあります。
- 自治体の移住相談窓口: 移住者向けの情報やサポートを提供しています。すでに地域で活動している移住者との交流機会を設けてくれる場合もあります。
- 社会福祉協議会: 高齢者向けのサービスや地域でのボランティア活動などに関する情報を持っています。地域の見守り活動などに関心がある人が集まる場所かもしれません。
- NPOや地域団体: 地域活性化に取り組むNPOや、特定のテーマ(農業、伝統文化など)で活動する地域団体があれば、連絡を取ってみましょう。あなたの活動と連携したり、協力者を紹介してくれたりする可能性があります。
これらの窓口では、地域に詳しい担当者が、あなたの状況に合わせて適切な情報や人を紹介してくれることがあります。一人で悩まず、まずは相談してみましょう。
ステップ4:活動の「種」を地域に少しずつ見せる
活動計画が具体的に固まってきたら、最初から全てを完成させるのではなく、できることから少しずつ地域にお披露目してみましょう。
- 空き家の外観をきれいに整える: 庭の手入れをする、壊れた部分を直すなど、外から見えるところからきれいにすることで、「この人はこの空き家を大切にしてくれるんだな」と地域の方に良い印象を与えられます。自分でDIYするなど、作業している姿を見せることも、地域の方に興味を持ってもらうきっかけになります。
- 小さな看板を出す: 活動の準備をしていることや、どんな活動をしたいのかを簡単に示した小さな看板を出すことも、地域の人に関心を持ってもらう方法の一つです。
- ご近所さんに準備の様子を話す: 「今、空き家を掃除していて」「〇〇をするために準備しているんです」など、進捗を話すことで、地域の人も活動を自分事として捉えやすくなります。
こうした小さな一歩が、「あの人、何か始めているな」「手伝えることがあれば声をかけてみようかな」という関心につながり、協力者が見つかるきっかけになります。
ステップ5:感謝の気持ちを伝える
協力してくれた人、話を聞いてくれた人、活動に興味を持ってくれた人には、その都度、丁寧に感謝の気持ちを伝えましょう。
- 「この前はありがとう」「いつも気にかけてくれてありがとうございます」といった一言や、収穫した野菜をおすそ分けするなど、感謝の気持ちを形にすることは、より強い信頼関係を築く上でとても大切です。
協力者が見つかったら
活動に賛同し、手伝ってくれる人が見つかったら、とても心強いですね。協力者との関係を良好に保つためには、以下の点を意識すると良いでしょう。
- 無理のない範囲で協力をお願いする: 相手の負担にならないよう、できる範囲でお願いすることが大切です。
- 役割分担を明確にする: 誰が何を担当するのか、事前に話し合っておくと、後々の誤解を防げます。
- 定期的なコミュニケーション: 活動の進捗や今後の計画について、定期的に話し合う機会を持ちましょう。
- 感謝を忘れない: 協力してくれることへの感謝の気持ちを常に持ち続けましょう。
空き家を使った活動は、地域との共同作業でもあります。完璧を目指さず、地域の人と共に楽しみながら進めていく姿勢が大切です。
不安や困りごとがある場合の相談先
地域との関係づくりや協力者探しに不安を感じる場合は、一人で抱え込まず、外部のサポートを活用しましょう。
- お住まいの自治体の空き家担当窓口、移住相談窓口: 地域情報に詳しく、適切なアドバイスや、関係機関、地域住民との橋渡しをしてくれることがあります。
- 地域の社会福祉協議会やNPO: 地域活動の専門家がおり、地域資源やネットワークに関する情報を提供してくれます。
- 地域のシルバー人材センター: 高齢者の就労支援を行っていますが、地域の様々な分野の経験者と繋がれる可能性もあります。
- 移住者向けの交流会や相談会: 実際に地域に移住して活動している先輩から、経験談やアドバイスを聞くことができます。自治体などが開催していないか調べてみましょう。
こうした公的機関や地域に根差した団体は、あなたの活動を応援し、地域とのより良い関係を築くためのヒントを提供してくれるはずです。
まとめ
地方での空き家活用は、建物を使うことだけでなく、その地域に住む人々と関わり、共に地域を豊かにしていく営みでもあります。
「地域に受け入れてもらえるか心配」「手伝ってくれる人が見つかるだろうか」といった不安は、誰もが感じる自然な気持ちです。しかし、まずは地域の一員として溶け込もうとする姿勢、そして活動を通じて地域に貢献したいという誠実な思いは、きっと地域の方々に伝わるはずです。
焦らず、小さなステップから始めてみてください。地域の情報収集をし、地域の集まりに顔を出し、自分の活動の「種」を少しずつ見せる。そして、困ったときは公的な窓口などを頼ってみる。
あなたの空き家を使った新しい活動が、あなた自身の生きがいにつながるだけでなく、地域の皆さんの笑顔にもつながることを願っています。地域と共に、無理なく、楽しく、あなたのペースで進めていきましょう。