空き家で始めるご近所助け合い修理・ものづくりスペース:得意を活かして地域とつながる
空き家で始めるご近所助け合い修理・ものづくりスペース:得意を活かして地域とつながる
新しい環境での地方暮らしは、期待とともに「地域に馴染めるかな」「何か地域でできることはないかな」といった気持ちもあるかもしれません。特に定年などで時間に余裕ができ、これまでの経験や趣味を活かしたいとお考えの方もいらっしゃるでしょう。
このサイトでは、空き家を活用した様々な新しい暮らしやビジネスの形をご紹介していますが、今回はその中でも「地域のご近所さん同士が助け合える、小さな修理やものづくりのスペース」を空き家で始めるアイデアについてお話しします。
このアイデアは、大きな事業ではなく、地域の人々との自然な交流を生み、ご自身の得意なことを活かすことができる、小さく無理なく始められる活動です。
「ご近所助け合い修理・ものづくりスペース」とは?
これは、空き家の一部や離れ、倉庫などを使い、地域の方々がちょっとした「困りごと」を持ち込める場所、または一緒に「ものづくり」を楽しめる場所をイメージしています。
例えば、
- 自転車の簡単なパンク修理や注油
- 家具の脚がぐらつくのを直す
- 簡単な日曜大工(たなを作るなど)のお手伝い
- 服のボタン付けやほつれ直し
- 庭の手入れの簡単なアドバイス
- 木工、手芸、陶芸などの趣味を教え合う・一緒に作業する
- 普段使わない専門的な道具(電動工具など)を貸し出す
といった活動の場です。専門家が行うような本格的な修理ではなく、「これくらいなら自分で直せそうだけど、道具がないな」「やり方が分からないな」といった、ご近所さん同士だからこそ頼みやすい、ちょっとしたお手伝いや情報交換、共同作業の場となります。
なぜ空き家で始めるのが良いのでしょう?
地方には使われていない空き家(あきや)が多くあります。これらの空き家を活用することで、この活動にはいくつかのメリットがあります。
- 場所の確保がしやすい: 広さのある空き家なら、作業スペースや道具置き場を確保しやすいです。
- 費用を抑えられる可能性: 新しく建物を借りたり購入したりするより、空き家を安く借りられる場合があります。自治体(じちたい)によっては空き家活用に対する支援制度がある場合もあります。
- 地域に開かれた場にしやすい: 元々人が住んでいた家なので、地域の人が親しみを感じやすく、気軽に立ち寄れる雰囲気を作りやすいです。
- 改修を自分で行いやすい: DIY(ディーアイワイ:自分でやること)での改修を前提とした空き家であれば、必要なスペースに合わせて手を加えることも可能です。
この活動から得られるもの
この「ご近所助け合い修理・ものづくりスペース」の運営は、決して難しいことではありません。ご自身の「得意なこと」「好きなこと」を活かし、無理のない範囲で始めることができます。
この活動を通じて、
- 生きがいややりがい: 自分の知識や技術が人の役に立つ喜びを感じられます。
- 地域住民との交流: 自然な形で地域の人々と顔見知りになり、良好な関係を築くことができます。話し相手が増え、孤立を防ぐことにも繋がります。
- 趣味や経験の深化: 自分の得意なことを教えたり、他の人のアイデアに触れたりすることで、さらに知識や技術が深まります。
- ちょっとした収入: 材料費の実費負担や、簡単な作業に対する感謝の気持ちとしての謝礼など、無理のない範囲で活動費に充てることも考えられます。(※)
※本格的な修理を請け負って対価を得る場合は、資格や届け出が必要になる場合があります。あくまで「ご近所助け合い」の範囲で、材料費程度の実費負担や、感謝の気持ちとして受け取ることを想定してください。
始めるためのステップとヒント
では、具体的にどのように始めたら良いのでしょうか。いくつかステップとヒントをご紹介します。
ステップ 1:どんな活動にしたいか考える
まずは、ご自身の得意なことや地域で必要とされていることを考え、「どのような修理やお助けをしたいか」「どのようなものづくりをしたいか」を具体的にイメージしてみましょう。無理のない範囲で、ご自身が楽しめる内容にすることが長く続ける秘訣です。
ステップ 2:活動場所(空き家)を探す
- 地域を知る: 暮らしている、あるいはこれから暮らしたい地域の空き家バンク制度や、不動産屋さん、地域の区長さんや住民の方に相談してみましょう。
- 空き家の状態を見る: 活動内容に合った広さや設備があるか、安全に使えるかなどを確認します。あまり大規模な改修が必要ない、状態の良い空き家の一部を使うことを考えてみましょう。
- 契約・費用を確認する: 空き家を借りる・購入する際の契約内容や費用について、不動産や法律の専門家、または自治体の相談窓口に確認することをお勧めします。
ステップ 3:スペースの準備
- 片付け・掃除: 空き家にある不要なものを片付け、きれいに掃除します。
- 作業スペースの確保: 活動に必要な作業台や道具置き場、交流スペースなどを確保します。大きな改修は必要ない場合が多いでしょう。床の補修や壁の簡単な塗り替えなど、DIYでできる範囲で整えるだけでも十分です。
- 必要な道具の準備: ご自身が持っている道具に加え、活動に必要な基本的な道具を揃えます。高価なものは少しずつ揃えるか、参加者同士で持ち寄る形でも良いかもしれません。
ステップ 4:運営方法を決める
- 開所日・時間: 週に数日、午後の数時間だけなど、無理のない範囲で開ける日時を決めます。
- 料金: 材料費の実費負担とするか、寄付箱を置くかなど、運営費用を賄う方法を検討します。
- 周知方法: 地域の回覧板や公民館の掲示板に張り紙をしたり、近所の方に直接お声がけしたりして、活動を知ってもらいます。
ステップ 5:安全への配慮
- 刃物や電動工具を使う場合は、安全な使い方を説明し、十分に注意して作業を行います。
- 万が一の事故に備え、地域活動向けの保険などについて調べておくことも大切です。自治体の窓口などで相談できます。
困ったときは一人で抱え込まないで
新しいことを始めるには、不安や疑問がつきものです。
- 空き家をどう探せば良いか
- 契約や費用について聞きたい
- どんな活動なら地域に喜ばれるか
- 法的な手続きが必要か心配
このようなときは、一人で悩まずに、まずは以下の場所に相談してみましょう。
- お住まいの自治体(じちたい)の空き家担当窓口
- 移住支援窓口
- 地域の社会福祉協議会(しゃかいふくしきょうぎかい)
- 地域のNPO(特定非営利活動法人)や住民活動を支援する団体
- 地域の民生委員(みんせいいいん)さん
これらの場所では、地域の情報に詳しかったり、同じような活動をしている人を紹介してくれたりする場合があります。
まとめ
空き家を活用して、ご自身の得意な修理やものづくりを活かす「ご近所助け合いスペース」は、地域に貢献しながら、ご自身の暮らしを豊かにする素晴らしい方法の一つです。
大きな成功を目指すのではなく、「地域の人とのつながりを持ちたい」「誰かの役に立ちたい」という温かい気持ちから、小さく始めてみることをお勧めします。無理なく、楽しみながら続けていくことが、何よりも大切です。
まずは「どんな小さなことなら始められそうかな?」と考えてみてください。きっと、あなたの経験や得意なことが、地域の誰かの笑顔につながるはずです。