【シニア向け】空き家で「貸したい・借りたい」が集まる場所に:地域のモノを共有して助け合うヒント
空き家が地域の「貸したい・借りたい」をつなぐ場所に
地方での新しい暮らしを考える際、空き家をどのように活かせるか、色々なアイデアが思い浮かぶかもしれません。今回は、空き家を使って地域の方々が「ちょっと借りたいな」と思う物や道具を貸し借りできる、小さな交流拠点を設けるアイデアをご紹介します。
年に数回しか使わない道具や、置き場所に困る大きな物など、誰かに貸したいけれど方法がない。逆に、ちょっとだけ使いたい物があるけれど、買うのはもったいないし、知り合いに借りるのも気が引ける。そんな経験はありませんか。
空き家の一部を、こうした地域の「貸したい」と「借りたい」をつなぐ場所として活用することで、ご近所さん同士が気軽に助け合える温かい関係を育むことができます。
この記事では、このアイデアの魅力や、実際に始めるためのヒント、そして気になることについて、分かりやすくお伝えします。
このアイデアの魅力は何でしょうか
空き家を「貸したい・借りたい」の拠点にすることには、たくさんの良い点があります。
- 無駄をなくし、節約につながる 年に一度しか使わないような物を、皆がそれぞれ買う必要がなくなります。地域の物や道具を共有することで、家計の節約にもなりますし、限りある資源を大切にすることにもつながります。
- ご近所さんとの助け合いが生まれる 「これ、持ってる?」「ちょっと借りたいんだけど」といったやり取りが生まれることで、自然とご近所さん同士の会話が増えます。物の貸し借りをきっかけに、困った時にはお互い様、という温かい関係が築きやすくなります。
- 新しい交流の場になる 物を借りたり返したりする際に、立ち寄った場所で少しおしゃべりをする。そんなささやかな時間でも、地域の皆さんと顔を合わせ、世間話をする大切な交流の機会になります。空き家が、地域の人々が集まるちょっとした寄りどころになるのです。
- 地域活動への参加の第一歩に 「大掛かりなことはできないけれど、地域のために何かしたい」と考えている方にとって、使っていない空き家の一部を活用して、身近な困りごとを解決するこの活動は、無理なく始められる地域貢献になります。
空き家をどう活用する?
この活動のために、空き家全体を大々的に改修する必要はありません。まずは、人が立ち寄りやすく、物の管理ができるスペースを考えてみましょう。
- 物の保管場所 貸し出す物や道具を整理して保管できるスペースが必要です。棚を置いたり、壁にフックを取り付けたり、できる範囲で使いやすく工夫します。湿気対策なども少し考えると良いでしょう。
- 受け渡し・相談スペース 物が貸し出されたり、返却されたりする際の受け渡しや、利用に関する簡単な説明、そしてご近所さんと少しおしゃべりするスペースがあると便利です。テーブルと椅子を置くだけでも良いでしょう。
- 簡単な改修 もし可能であれば、入口の段差をなくしたり、照明を明るくしたりといった、誰もが安心して立ち寄れるような簡単な改修を検討するのも良いかもしれません。ただし、まずはできることから始めるのが大切です。
活動の始め方と進め方のヒント
一人で全てを抱え込まず、無理なく続けることが成功の鍵です。
- どんな物を扱うか考える まずは、ご自身の周りやご近所で「これ、たまにしか使わないよね」「貸し借りできると助かるよね」といった物がないか考えてみましょう。例えば、草刈り機、脚立、高枝切りバサミなどの園芸用品、大勢で集まる時の食器、簡単な工具、ミシンや裁縫道具、季節の飾り付け用品など、地域によってニーズは様々です。最初は一つか二つ、身近な物から始めるのも良いでしょう。
- 地域のニーズを探る 実際に活動を始める前に、地域の皆さんにどんな物の貸し借りがあると嬉しいか、聞いてみることをお勧めします。地域の集まりや回覧板などでさりげなく尋ねてみると、思わぬ声が聞けるかもしれません。
- 貸し借りの簡単なルール作り 安心して気持ちよく利用してもらうために、簡単なルールを決めましょう。「貸出簿をつける」「貸出期間を決める」「利用料は無料にするか、少しだけいただくか」「もし物が壊れたらどうするか」などを、分かりやすい言葉で定めます。難しい規約は不要です。紙に書いて空き家に貼っておいたり、貸出簿に簡単にまとめておくと良いでしょう。
- 皆さんに知らせる 活動を始めたら、地域の皆さんに知ってもらうことが大切です。回覧板や地域の掲示板にお知らせを貼る、公民館や地域の集まりで紹介してもらう、ご近所さんに直接声をかけるなど、アナログな方法が効果的です。
- 一人で抱え込まず、仲間を見つける この活動は、一人で全てを行うのは大変です。物の管理や受け渡しを、ご近所さんと交代で行ったり、得意な人にお手伝いをお願いしたりと、地域の方々と協力して進められると、より楽しく続けられます。
費用はどれくらいかかるでしょうか
活動を始めるにあたって、大きな費用をかけずに始めることができます。
- 空き家の改修費: 大規模な改修ではなく、最低限の片付けや清掃、必要な棚や鍵の取り付け程度であれば、費用を抑えられます。DIYでできる範囲で工夫するのも良いでしょう。
- 運営費: 貸出簿の紙やペン、簡単な表示を作る材料など、ごく少額で済みます。
- 光熱費: 立ち寄りスペースを使う際の電気代などが必要になる場合があります。
もし空き家の改修や片付けに費用がかかる場合、自治体によっては空き家改修の補助金制度を設けていることがあります。シニア向けの地域活動支援の制度なども含め、お住まいの自治体の窓口に相談してみることをお勧めします。また、運営費について、利用者から維持管理協力費として少しだけいただくという形も考えられますが、まずは無料で始めて地域の反応を見るのも一つの方法です。
知っておきたい注意点
活動を円滑に進めるために、いくつか注意しておきたい点があります。
- 管理の手間: 物の出し入れや貸出簿の管理など、少なからず手間はかかります。無理のない範囲で行えるよう、扱う物の種類や数を調整したり、協力者を見つけたりすることが大切です。
- 物の紛失・破損: 借りた物がなくなってしまったり、壊れてしまったりする可能性もゼロではありません。簡単なルールで、破損時の対応(修理するか、弁償するかなど)を決めておくと、トラブルを防ぎやすくなります。まずは高価な物ではなく、気軽に貸し借りできる物から始めるのが安心です。
- トラブル対応: 利用者さん同士や、貸し借りに関する困りごとが起きる可能性も考えられます。一人で抱え込まず、事前に決めたルールに沿って対応したり、地域の相談できる相手に話をしたりすることが大切です。
どこに相談すれば良いでしょうか
「空き家を使って何か始めたいけれど、何から手をつければ良いか分からない」「地域の活動について相談したい」といった場合は、一人で悩まずに相談できる窓口があります。
- お住まいの市町村役場: 空き家に関する相談窓口や、地域活動の支援に関する部署がある場合があります。空き家バンク制度や補助金について尋ねることもできます。
- 地域包括支援センター: 主に高齢者の暮らしをサポートする機関ですが、地域のネットワークや活動について情報を持っていることがあります。
- 地域のNPOや市民活動団体: 既に地域で活動している団体があれば、協力をお願いしたり、アドバイスをもらったりできる可能性があります。
- 社会福祉協議会: 地域の福祉活動や住民活動を応援している団体です。地域とのつながりを作るヒントを得られるかもしれません。
まずは、お住まいの地域の身近な窓口に「空き家を使って、地域の人たちとちょっとした物の貸し借りができる場所を作りたいと考えているのですが…」と気軽に相談してみてはいかがでしょうか。きっと、何かヒントが得られるはずです。
この活動で得られるもの
空き家を地域の「貸したい・借りたい」をつなぐ場所にすることは、単に物のやり取りをするだけではありません。そこから生まれる「ありがとう」の言葉や、お互いを気遣う気持ち、そして何気ないおしゃべりが、暮らしに温かさと潤いを与えてくれます。
地域の中で誰かの役に立てているという実感は、何よりの生きがいにつながります。大きなビジネスにするのではなく、自分のできる範囲で、地域の方々と楽しく関わる。そんな新しい暮らし方の一つとして、このアイデアを考えてみていただけたら嬉しく思います。
まずは小さな一歩から、始めてみませんか。